昆虫観察|2022年9月

 赤沢保育園の一番人気と言えば玄関入ってすぐのところにある『昆虫コーナー』でしょうか。現在、カブトムシのオスとメスが1匹ずつ、2匹いたメスは先日卵(50個ほど)を産んだ後弱って死んでしまいましたが、その他にはクワガタが1匹、カマキリが3匹(おそらく春に保育園でふ化した成虫)がいます。

 大人になってからは「虫」と名の付くものはほぼすべて触れなくなってしまいましたが、そんな私も子どもの頃は家でつがいのカマキリを育てていました。
『カマキリを死なせてはいけない』子ども心に芽生えた責任感を胸に、私は図鑑でカマキリの生態を調べ、そして毎日家の近くにある茂みに虫取り網を持って出掛けては、カマキリの餌になる小さな蝶を採るのが日課になりました。
採ってきた蝶を残忍に、けれどむしゃむしゃと美味しそうに食べるカマキリの姿を複雑な気持ちで眺めていましたが、新鮮な生餌のおかげでカマキリたちは小さな虫かごの中でも元気に育ち、やがてその時が来たのでした。
メスの体がオスよりもはるかに大きくなったある日、メスはオスを食べ始めました。図鑑を読んでそのことは知ってはいたのですが、その衝撃的な光景を目の当たりにした私は固唾をのんでその一部始終を眺めたのでした。オスの頭がコロンと虫かごの下に落ちた瞬間の、そのはかなくも切ないオスカマキリの一生になんとも言えない気持ちになったことを今でもはっきりと覚えています。
翌春、卵からふ化した無数の小さなカマキリたちは風に乗りふわふわ飛んで旅立っていきました。その様はまるで映画のフィナーレのように感動的で、私にとって生涯忘れることのできない体験となりました。

 昆虫の寿命は短く、卵から幼虫、さなぎ、成虫とその成長過程をさらに興味深くドラマチックにしながら一生を終えていきます。おそらく子どもたちが人生で一番初めに身近に体験する「生命の誕生と死」は、昆虫のそれかもしれません。「一寸の虫にも五分の魂」どんなに小さな虫にも命があり、またその命を犠牲にして別の命につながっていく自然の連鎖を昆虫は教えてくれます。『昆虫コーナー』を食い入るように眺めている子どもたちの様子を見ていると、子どもの頃には自然と虫に興味が沸くよう、何か本能に刷り込まれているのではないかと 思えるほどです。子どもたちのこの昆虫への興味が命の大切さや自然の偉大さを学ぶきっかけとなってくれれば良いなと思います。

 「おうちで虫を飼うのはちょっと」というご 家庭も多いかと思いますので、送り迎えの際にはぜひ、この赤沢保育園の『昆虫コーナー』で子どもたちと一緒に昆虫観察を楽しんでいただければと思います。