男性の育児休業|2022年8月

今から5年ほど前のことです。職場で初めて男性社員が育児休暇を取得しました。彼は初めての子どもの出産に合わせて3か月の育児休暇を申請していました。でも上司はじめ周囲の社員の態度は冷ややかなものでした。「俺たちの時代にはそんなもん無かったよ、世の中ずいぶん変わったもんだね~。」「3か月も休み取るなんて、本当に迷惑だわ。」そんな周囲の言葉などはものともせず、彼はきっちり3か月間の育児休暇を終えて職場に復帰してきました。私は戻ってきた彼に「どうだった?子育て、大変だった?」と聞くと、いつもぶっきらぼうで笑った顔などほとんど見せたことがなかった彼が照れ笑いしながら「いやぁ、大変でしたよ、想像以上に。でもいい経験でした。」と答えてくれたのでした。彼の子育て体験は試練だったかもしれませんが、その表情には以前にはなかった自信と余裕のようなものが感じられ、人としての成長ぶりが垣間見えたのでした。出産後の育児休業と言えば、一昔前までは出産をする女性に向けた制度でしたが、こうして男性も育児を体験できるなんて素晴らしい世の中になったものだな、と『寿退社』がまだ一般的だった時代に世に出た私は、しばし感慨にひたったのでした。

厚生労働省の後押しもあって、最近では多くの企業で男性社員に向けた育児休業制度が取り入れられています。しかしその実態はなかなか難しいものがあるようです。

『とるだけ育休』という言葉があるようです。育休が取りたいのにその制度が職場にない人もたくさんいる中で、育休制度のある職場、そして理解ある同僚、上司にも恵まれ、晴れて育児休業を取得してくれた夫が、家にいても育児どころか何もしてくれない、むしろ夫の世話が増えて大変、早く職場復帰して欲しい、等々本来の育児休業の目的が果たせていないのが『とるだけ育休』と呼ばれるものです。ある調査では育児休業を取得した男性のうち3人に1人は一日のうちの家事育児に充てた時間が2時間以下だそうです。

「夫は子どもが小さかったころは毎日定時に仕事を切り上げて、毎晩子どもをお風呂に入れてくれた。それが何よりも助かった。」先日そんな話をしてくれたママさんがいました。確かに男性の大きな手だと、赤ちゃんをお風呂に入れるのも楽です。たとえ育休が取れなかったとしても、育児に参加・協力することはできるようです。逆に育児休暇が取得できても、無計画だとただの長期休暇『とるだけ育休』になって、かえってママの負担やストレスを増やしてしまうので、育休に入る前からしっかりと準備、計画が必要なようです。