地名・人名の読み方 その難しさ・面白さ|2015年5月

 漢字の読み方は実にさまざまである。特に地名人名は複雑で一筋縄でいかない。私事で恐縮ですが園長の私は平成になってから今の保育の世界に関わるようになった。それ以前の昭和の終わりまでは製造・物造りの世界に30年以上従事していた。その昭和末年頃、栃木県宇都宮市郊外のある工場に勤務していた時のことだった。

 その工場のある部門は24時間稼働しておりその夜間作業者の中に中国の留学生がいた。留学生といっても40歳前後で西安市の工業大学の助教授で、中国国費で宇都宮大学工学部で学んでおられた。その頃の中国はまだ経済的に未発展で今のような旅行者が爆買いするような経済力も工業力もなく、資金的にも乏しい状況だった。それだけにエリート留学生でも支給される国費は月5万円程度で、アルバイトなしではとても生活できなかった。それはともかく、さすがに大学の助教授だけあって彼は紳士であり学究的で日本語習得姿勢も謙虚熱心だった。その日本語学習のために手当たり次第に日本人にそれも漢字に関連した質問が多かった。その相手として私は結構当てにされた。

 上野(こうづけ)・下野(しもつけ):栃木県はその昔下野(しもつけ)の国と呼ばれ隣の群馬県は上野(こうずけ)の国とよばれたことはご存じの通り。忠臣蔵でお馴染みの悪役吉良上野介(きらこうずけのすけ)は有名であり、この場合上野をこうずけと読むことは大抵の人は知っている。しかしなぜ上野がこうずけになり、下野がしもつけになるかを答えられる人は極めてすくないのでは。その留学生はその説明を求めてきた。彼の質問には大抵答えていたが、この質問には即答できなかった。

 考えてみると実に不思議な読み方である。

 稲イネや麦ムギの実、籾もみにはトゲのようなヒゲ状のものが付属している。そのトゲ・ヒゲ状のものをノゲまたはノギと呼び漢字で野毛または禾と書く。 ノゲ、ノギは奈良・平安時代では同時に穀物を意味した。横浜の野毛山町や東京世田谷に上野毛町がある。穀物のよくできる地域を毛の国とよんだ。山手の地域を上の毛の国、その下手を下の毛の国と呼んだ。上越新幹線の駅「上毛高原」もそんな由来。また奈良平安期には「上の毛の国」、位置を表す初めの「の・野」を「つ・津」という言い方となり「かみつけのくに・上津毛野国」となる。かみ「上」は「神」とも通じ、発音も「かみ」から「こう」と変化する。兵庫県の神戸市(こうべし)や伊豆七島の神津島(こうづしま)のように。その結果「かうづけ」になるのだが表記は「「毛」が略されて単に「上野」だけとなり、現代仮名遣い表記では「こうずけ」となる。同様に「下津毛野国」が「下野」だけで「しもつけ」と読んだ。

 ついでながら、栃木県小山市から群馬県高崎市を結ぶ鉄道JR「両毛線」があり、群馬県の有力新聞には「上毛新聞」がある。

また、変わった読み方の人名では昭和前期を代表する流行歌手、秋田県出身の東海林太郎(しょうじたろう)をご存じでしょうか。

 東海林がなんで「しょうじ」になるのか、永年の疑問だった。ネット検索はそんな理由を調べるのに実に便利だ。

 それによると諸説多くあるがその全部は長くなるので要約すると大略次のようになる。

 まず「しょうじ」とは庄司または荘司のことで、昔、領地のことを「荘園・しょうえん」と呼んだ。その荘園の管理者のことを「荘司・庄司」とよんだ。山形県内の「東海林・とうかいりん」という地名の場所の管理者を荘司しょうじと呼んだのがはじまりとか。また山形では「とうかいりん」とそのままの呼び方もあり、また「しょうじ」の二通りあるとか。何れにしろ山形県、北海道、秋田県、宮城県に多い苗字とのこと。

 漢字の読み方、いろいろあって奥深いですね。

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 この3月末に閉校した中央区新潟島下町地域の四小学校(湊、栄、入舟、豊照)を統合して新たに『日和山小学校』が旧入舟小学校の施設で4月から発足したことはご存じの通り。

 好天に恵まれ4月9日(木)、その日和山小学校の入学式は57名の新一年生を迎えて予定通り無事に開催終了。

 赤沢保育園からは12名の卒園児がめでたく入学。

 日和山小学校校歌は、旧栄小学校出身のかの超有名歌手小林幸子さんによる作詩作曲。右手の歌詞は入学式会場室内体育館に額装掲示を撮影。

 同校入学式に園長出席、校歌の作詩作曲者の招待出席があるかもとちょっぴり期待したがそれはなく、その代わり下記右上の写真のステージ上の立派な生花が名札とともに大きく飾られていた。

 校歌の曲調はやさしく明るく親しみを感じる歌いやすい曲との印象をうけた。歌詞3番目には四校の文字が織り込まれ、さらにさりげなく「幸」の字も‥。

 校歌の歌詞のように「日和山小学校」の未来が豊かに栄える事を心から祈ります。

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