目には青葉 山ほととぎす 初鰹|2020年5月

 園庭の木々の新芽の透き通るような淡い緑の美しさに思わず目が止まる。目に新緑の青葉、耳にはホトトギスの鳴き声、口には初鰹が何よりの一番だとの思いを俳句に託した江戸時代の俳人の句が頭に浮かぶ。

 とは言えホトトギスの鳴き声の実際をご存じでしょうか。実際、新潟市の下町に住まっていると耳にすることはまずない。その鳴き声は「とうきょう とっきょ きょかきょく:東京特許許可局」と例える伝え方もありで、とにかく、きょっ、きょっ、きょっと夏間近を告げる季節音だ。澄んだよく通る鳴き声を実際に耳にすると多くの人はきっと聞き覚えがあるのでは。

 ホトトギスと相前後して渡来する鳥にカッコウ鳥がいる。いずれも鳩よりはやや小型だが燕雀よりはずっと大型で何れも托卵(たくらん)をする。托卵とは他の鳥の巣に自分の卵を産み落とし抱卵や育雛を他鳥にさせる行為だが、単に自分の卵を産み落とすだけでなく先にある他鳥の卵を員数合わせのため食したりして排除したりするから非道な話。しかも雛になってからも仮親がせっせと運ぶ餌を独り占めするために他の本来の雛を巣から追い落としたりして仮親の餌をえげつなく独占するのだ。知ってか知らずかオオヨシキリや百舌鳥(もず)はせっせと自分の雛を殺した他鳥の雛を育てることをする。自然界にこのような不条理な残酷な話が存在するのだ。

 園庭の正面、椿の開花は盛りが過ぎたが代わって花海棠(はなかいどう)が満開だ。その隣に木瓜(ボケ)も満開してる。

 春を謳歌する花々、園舎改築後はどのように咲いてくれるだろうかと思いが至ると、次のような中国の古詩が頭に浮かんでくる。 

 年年歳歳花相似たり  歳歳年年人同じからず

 毎年毎年花は同じように咲くが、それを眺める人の世は同じようには行かず変わるものだと。

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新型コロナウイルス

 今年の2月始め、横浜港にクルーズ船ダイアモンドプリンセス号が入港した。船内に新型コロナウイルス陽性患者の発生が問題になり感染者状況が日々報じられた。それまで中国に発生が報じられてもどこか遠い出来事のようにと受け止めていたのがおおよそではなかったでしょうか?クルーズ船の深刻な状態がただ事ではないと緊張が国中に感じはじめてから約二か月、クラスターとかパンデミックとかオーバーシュートなどの聞きなれない言葉の氾濫も戸惑いを増幅させてくれる。

 とにかく一日も早い沈静化を祈るばかりです。

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